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第85話 正反対の2人

last update Last Updated: 2025-07-11 22:12:34

「あ……ベルナルド王子……それにテレシアさん……」

見知った顔がこちらへ向かって駆けつけてくる姿を見て、安堵のあまり腰が抜けて地面に座り込んでしまった。

「どうしたんだ!? ユリア!」

「ユリアさん、しっかりして!」

2人から支えられて、何とか立ち上がるとすぐにベルナルド王子が声を荒げた。

「ユリア、心配させるな! 今の今まで何処で何をしていたんだ!?」

「私達ずっと心配していたのよ? 何日も学校を休むから様子を見に来てみれば屋敷に見えない壁でも出来たかのように近寄ることが出来ないし」

「え!? ほ、本当に!? それならあれから何日経過しているんですか!?」

「俺たちがユリアを屋敷へ送った日から10日経過しているぞ?」

「10日……? そ、そんな……」

まさかの話に驚いた。あれから10日も経過していたなんて。

「それで今日も試しに屋敷へ寄ったのよ。そうしたらユリアさんが突然空中から現れたのだから。本当に驚いたわ」

「一体何があったんだ? まぁ今日は遅刻しても別に構うことはないだろう。話を聞くぞ?」

ベルナルド王子はそういうけれども、本当に遅刻しても構わないのだろうか?

「ええ、そうね。もし遅刻して何かお咎めがあった場合は権力を行使してしまえばいいのよ」

テレシアは確か王族である身分を隠したいのではなかったっけ? それなのに権力を行使すればいいって……。

「ほら、早く話せ」

「ねえ、話してよ」

ベルナルド王子とテレシアは好奇心旺盛な目で迫ってくる。

「は、はい。実は……」

私は2人に昨夜の出来事を全て話した。ベルナルド王子とテレシアに馬車で送って貰った後に父と2人で夕食を取ったこと、その後ベッドに入って眠りに就き、寒さで目が覚めるとそこは森の中だったこと。

さらに自分の護衛騎士として雇い、馬車事故の後から行方不明になっていたジョンが目の前に現れ、いきなり命を狙われたこと。そこへジョンそっくりの謎の青年が現れて突然眠らされ、目覚めるとそこは自分のベッドの上だったこと。

廊下を出ると再びジョンが現れて命を狙って来たものの、昨夜と同様同じ青年が現れて彼のお陰で気付けば外に出ていたこと……それら全てを一気に話した。

私が話している間、途中何度もベルナルド王子やテレシアが質問してきたけれども、話の腰を折られるのが嫌で一気に説明してしまった。

「……以上ですが、お分かりいただけ
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